平成23年12月22日
企業会計基準委員会

実務対応報告公開草案第37号
「改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る
四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い(案)」の公表



平成23年12月2日に、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号。以下「改正法人税法」という。)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号。以下「復興財源確保法」という。また、改正法人税法と復興財源確保法を合わせて、以下「改正法人税法等」という。)が公布されました。
3月決算会社等においては、四半期会計期間中に税率の変更等が行われることとなり、その取扱いは企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」という。)などで示されていますが、今般の改正法人税法等に伴う四半期財務諸表における税金費用の取扱いについて、必要と考えられる実務上の取扱いが、企業会計基準委員会より公開草案として公表されました。


(主な内容)
1.改正法人税法等の公布に伴い四半期累計期間中に税率の変更等が行われた場合で、年度決算と同様の方法で税金費用を計算している場合には、次のとおり取り扱われる。
(1) 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算について
四半期累計期間中に税率の変更が行われた場合で、年度決算と同様の方法で税金費用を計算している場合には、繰延税金資産及び繰延税金負債は、原則的な考え方により、支払又は回収が行われると見込まれる期に対応した改正後の税率により計算する。平成24 年4 月1 日から平成27 年3 月31 日までの間に開始する事業年度においては基準法人税額に10%の税率を乗じた復興特別法人税額が上乗せされることとされているが、この期間に支払又は回収が行われると見込まれる繰延税金資産及び繰延税金負債については、復興特別法人税額を含む法定実効税率で計算することになる。
(2) スケジューリングが不能な一時差異に係る計算について
スケジューリングが不能な一時差異については、一律に復興特別法人税額を含まない法定実効税率で繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する。
(3) 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産について
改正法人税法等においては欠損金の繰越控除制度が改正され、平成20 年4 月1 日以後に終了した事業年度において生じた欠損金の繰越期間が7 年から9 年に延長されるとともに、控除限度額が繰越控除前の所得金額の80%に制限される。したがって、四半期貸借対照表に計上する税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の金額に、改正法人税法等が影響を及ぼす可能性があるため留意する必要がある。

2.改正法人税法等の公布に伴い四半期累計期間中に税率の変更が行われた場合で、四半期特有の会計処理で税金費用を計算している場合には、次のとおり取り扱われる。
○ 税率変更後の見積実効税率の算定について
四半期累計期間中に税率の変更が行われた場合、見積実効税率の調整が必要となり、上記に示した算式の予想年間税金費用に代えて、予想年間納付税額と予想年間法人税等調整額との合計額を使用して見積実効税率を算定する(中間税効果実務指針第10 項)。
○繰延税金資産等の期首残高から税率変更の影響を計算する取扱いについて
当期首の繰延税金資産及び繰延税金負債の大部分がそのまま当期末の繰延税金資産及び繰延税金負債を構成するような場合において、まず四半期財務諸表における税金費用について見積実効税率を使用して計算し、次に当期首の繰延税金資産及び繰延税金負債を変更後の税率により修正し、その修正額を当該税金費用に加減して処理したときはこれを認めることとしている(四半期適用指針第19 項及び中間税効果実務指針第10 項なお書き)。
○ 法定実効税率を使用する場合の取扱いについて
見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合には、法定実効税率を使用する(四半期適用指針第19 項及び中間税効果実務指針第11 項)。この取扱いを適用している場合で、四半期累計期間中に税率の変更が行われた場合、事業年度の末日に存在すると見込まれる一時差異及び税務上の繰越欠損金額を見積り、税率変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の修正差額を、税率変更が行われた四半期累計期間及びその後の事業年度末までの期間に合理的な方法
により配分し、税率変更が行われた四半期累計期間に配分した修正差額を当該期間における税金費用に加減することとなる(中間税効果実務指針第12 項)。

3.適時に一時差異等のスケジューリングを行うことが実務上困難な場合
四半期財務諸表の作成にあたっては、適時性に係る強い制約があることから、改正法人税法等に伴う税率変更に対応する場合において、適時に一時差異等のスケジューリングを行うことが実務上困難な場合には、改正法人税法等による複数の税率を用いて税金費用を計算することができないことも想定される。こうした状況に配慮し、合理的で実態にも即していると考えられる方法により算出した単一の税率により税金費用を計算することも認められる。単一の税率としては、例えば、次のようなものが考えられる。
@ 繰延税金資産の回収可能性の判断の際に使用した課税所得の見積期間の各期の法定実効税率を単純に平均した税率
A 一時差異等の項目の主な解消見込時期に対応した法定実効税率(例えば、一時差異等が、主におおむね3 年以内に解消されると見込まれる場合には復興特別法人税額を含む法定実効税率を使う。また、例えば、一時差異等が、主におおむね3 年を超えて解消されると見込まれる場合には復興特別法人税額を含まない法定実効税率を使うなど。)
この取扱いを適用した場合には、その旨、使用した税率及びその算定方法を注記する。

(適用時期等)
本実務対応報告は、改正法人税法等の公布日を含む事業年度に係る四半期会計期間のうち、改正法人税法等の公布日以後に終了する四半期会計期間に適用される。なお、改正法人税法等の公布日以後で、本実務対応報告の公表日前に終了した四半期会計期間についても適用となる。
ただし、3 の取扱いは、改正法人税法等の公布日以後に最初に終了する四半期会計期間のみに適用される。
本実務対応報告の適用については会計方針の変更として取り扱わないことに留意する必要がある。
なお、税率変更に係る会計処理の結果、四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表に重要な影響を及ぼすと認められるなど、財務諸表利用者が四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表を理解する上で重要な事項であると考えられる場合には、その旨及び影響額を注記する。影響額の注記にあたり、適時に正確な金額を算定することができない場合には、概算額によって注記することもできる(四半期適用指針第80 項
)。

詳細は、企業会計基準委員会ホームページをご覧ください。)