平成24年5月17日

企業会計基準委員会

企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表

 企業会計基準委員会より「退職給付に関する会計基準」(以下「本会計基準」という。)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下「本適用指針」という。また本会計基準と本適用指針を合わせて、以下「本会計基準等」という。)が公表されました。

(主な変更点)
(1)未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法
@貸借対照表上での取扱い
 本会計基準等では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、税効果を調整の上で貸借対照表の純資産の部(その他の包括利益累計額)で認識することとし(本会計基準第24項及び第25項)、積立状況を示す額をそのまま負債(退職給付に係る負債)又は資産(退職給付に係る資産)として計上する(本会計基準第13項)
A損益計算書及び包括利益計算書(又は損益及び包括利益計算書)上での取扱い
 本会計基準等は、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の費用処理方法については変更しておらず、改正前会計基準等と同様に平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に費用処理する。
 ただし、数理計算上の差異及び過去勤務費用の当期発生額のうち、費用処理されない部分についてはその他の包括利益に含めて計上し、その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分についてはその他の包括利益の調整(組替調整)を行うこととなる(本会計基準第15項)。
B個別財務諸表における当面の取扱い
 個別財務諸表においては、当面の間、上記の@及びAただし書きの改正を適用せず、改正前会計基準等の取扱いを継続する(本会計基準第39項)。

(2)退職給付債務及び勤務費用の計算方法
@退職給付見込額の期間帰属方法の見直し
 本会計基準では、退職給付見込額の期間帰属方法として、次の方法の選択適用を認めている。
・期間定額基準
・給付算定式基準(退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法)なお、この方法による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならない。
A割引率の見直し
 本会計基準等では、割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければならないものとし、例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれるとしている(本適用指針第24項)
B予想昇給率の見直し
 本会計基準では、退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には「予想される」昇給等が含まれるものとしている。
(3)開示の拡充
 本会計基準等では、退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、国際的な会計基準で採用されているものを中心に開示項目を拡充している(本会計基準第30項)。また、本適用指針に開示例を付している。

(4)複数事業主制度の取扱いの見直し
 複数事業主制度のうち、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないケースでは、、要拠出額をもって費用処理されるが、改正前会計基準等は、複数事業主間において類似した退職給付制度を有している場合について、このケースににあたらないものとみなしていたが、本会計基準等では、一律にあたらないものとはみなさず、制度の内容を勘案して判断することとしている(本適用指針第64項及び第121項)

(5)長期期待運用収益率の考え方の明確化
 長期期待運用収益率の設定の際に考慮すべき事項は、改正前会計基準等における取扱いを引き継いでいるが、長期期待運用収益率の算定は、退職給付の支払に充てられるまでの期間等を考慮して設定することを明らかにしている。これは、取扱いの明確化にすぎないため、会計方針の変更には該当しない(本適用指針第25項及び第98項)

(6)名称等の変更
退職給付引当金→退職給付に係る負債
前払年金費用→退職給付に係る資産
過去勤務債務→過去勤務費用
期待運用収益率→長期期待運用収益率
なお、個別財務諸表においては、この取扱いの改正を適用せず、改正前会計基準等の名称を使用する(本会計基準第39項(3))

適用時期等
(1)下記(2)を除くすべて
 平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。早期適用として、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。
(2)退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直し並びに複数事業主制度の定めなど
 平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。なお、当該期首からの適用が実務上困難な場合には、所定の注記を条件に、平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することも認める。早期適用として、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。

詳細は、企業会計基準委員会ホームページをご覧ください。)