平成28年3月28日

企業会計基準委員会

繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

本適用指針の概要
本適用指針は、平成27 年12 月に公表された回収可能性適用指針を改正するものです。

早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表における取扱い(本適用指針第49 項(2))
早期適用した企業において、早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表に対応する早期適用した年度の四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表(比較情報)について会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う定めを当該年度の期首に遡って適用する。

適用時期(本適用指針第49-2 項)
本適用指針の適用時期は、平成27 年12 月に公表された回収可能性適用指針と同様とする。

(平成27年12月に公表された回収可能性適用指針の主な内容)

企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
監査委員会報告第66 号における企業の分類に応じた取扱いを撤廃する場合には実務への影響が大きいと考えられることから、当該取扱いの枠組み、すなわち企業を5 つに分類し、当該分類に応じて繰延税金資産の計上額を見積る枠組みを基本的に踏襲した上で、当該取扱いの一部について必要な見直しを行う。

(分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、要件に基づき企業を(分類1)から(分類5)に
分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定することとした上で、(分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。

(分類2)及び(分類3)に係る分類の要件
繰延税金資産の回収可能性の判断は収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づく。受取配当金の益金不算入額のように永久に益金又は損金に算入されない項目が生じることなどにより会計上の利益の額と課税所得の額が通常は一致しない中で、繰延税金資産の回収可能性の判断においては課税所得の十分性を検討する必要があるため、企業を分類するにあたって重視すべき要件としては課税所得がより適切であると考えたためである。なお、課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除くが、これは、過去において臨時的な原因により生じた益金及び損金は、将来において頻繁に生じることは見込まれないという推定に基づいたものである。

(分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取扱い
(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとしつつ、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

(分類3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間に関する取扱い

(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い
過去(3 年)又は当期において重要な税務上の欠損金が生じていること等により(分類4)に係る分類の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的な根拠をもって説明するときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、将来においておおむね3 年から5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることが合理的な根拠をもって説明するときは(分類3)に該当するものとして取り扱う。

.適用時期等
.本適用指針は、平成28 年4 月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成28 年3 月31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。


本適用指針の適用に関する取扱い
本適用指針の適用初年度の期首において、これまでの会計処理処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。

適用初年度の取扱い
本適用指針の適用初年度においては、当該年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。

会計方針の変更による影響額の注記事項の取扱い
本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更による影響額の注記について、企業会計基準第24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24 号」という。)第10 項(5)ただし書きの定めにかかわらず、適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記する。

 詳細は、企業会計基準委員会ホームページをご覧ください。)